アメコミ読書ブログ

主にマーベルコミックについて、邦訳から原書まで、読んだものを紹介します。

マーベル グラフィックノベル・コレクション(56) スパイダー・グウェン:モスト・ウォンテッド?

アシェットのマーベル グラフィックノベル・コレクション第56号はスパイダー・グウェン:モスト・ウォンテッド?でした。

映画スパイダーバースでもお馴染み今や大人気キャラクターのスパイダー・グウェンですが、スパイダー・バースで初登場したキャラクターで、スパイダー・バースの前日譚であるエッジ・オブ・スパイダーバースにもエピソードが収録されていました。本書はそのエッジ・オブ・スパイダーバースのエピソードに加えてスパイダーバース後のスパイダー・グウェンを描く単独シリーズの#1-5までが収録されています。

ピーターの死の責任を感じるグウェンはヴィランだけでなくスパイダーウーマンを捕まえようとする警察の両面に挟まれつつ戦いを続けます。ピーターではなくグウェンが蜘蛛に咬まれた別次元(アース65)でのストーリーということで悪役のマット・マードックに警官のフランク・キャッスルと、マーベルユニバース(アース616)と似ているようで全然異なる登場キャラクターも面白いです。また、スパイダーハムも登場します。

スパイダー・グウェンの成功に関してはロビー・ロドリゲスによるデザインの功績が非常に大きく、映画スパイダーバースでのグウェンパートのアートコンセプトも初期のスパイダー・グウェンシリーズのカバーアートにインスパイアされているそうなのですが、コミック部分のアートは結構クセがある感じで好みが分かれそうですし、脚本も相まってちょっと読みづらい部分もあると感じました。

なお、本作は小プロさんから続編も含めて邦訳が出ています。

ストーリー的には何も解決せずやや中途半端なところで終わってしまうのですが、小プロさんの邦訳はシルクのシリーズとクロスオーバーするスパイダーウィメンも挟んで第3巻まで出ていますのでマーベル グラフィックノベル・コレクションを集めているという方以外はこちらで揃えた方がよいかもしれません。

Civil War: Young Avengers & Runaways

まだまだ終わらないシビルウォーのタイインを読むシリーズ、今回は若手ヒーローグループであるヤングアベンジャーズとランナウェイズによるショートシリーズです。

超人登録法に未登録ということでS.H.I.E.L.D.の攻撃を受けるランナウェイズをヤングアベンジャーズがキャップの反対を押し切って助けに向かうものの当初は誤解もあって対立してしまうのですが、その後差し向けられた洗脳されたノー・ヴァーとの戦いでは共闘します。ニューアベンジャーズと心を通わせるランナウェイズですが、最終的にはやはり反対派への参加を断り、逃亡を続ける道を選ぶのでした。

表紙はジム・チャンですが、中身のアートはステファノ・カセッリが担当しています。線がはっきりしていて見やすいアートですし、話もわかりやすくまとまっていて読みやすかったです。キャラクターも魅力的なのですが、ヤングアベンジャーズとランナウェイズという2チームが登場するため人数が多すぎるのと、個人的に本作が初見のキャラクターも多く少し混乱する部分はありました。ランナウェイズ自体、本作を読むまで知らなかったのですが、スーパヴィランを親に持つ若者たちのチームのようです。

ヴィレッジブックスさんから出ていた邦訳は現在では中古でもなかなか入手が難しそうです。

Civil War: Captain America

シビルウォーのタイインを読むシリーズ、今回はエドブルベイカーが担当していたキャプテン・アメリカ誌でのタイインで、以下のエピソードが収録されています。

  • Captain America (2004) #22-24
  • Winter Soldier: Winter Kills

キャプテン・アメリカよりはバッキー、シャロン、フューリーなどキャップ周辺の人物たちの動向が描かれ、シビルウォー後に展開されるデス・オブ・キャプテン・アメリカへの導入にもなっているのですが、これを読まなくても話は通じるかなという感じです。

Winter Soldier: Winter Killsはバッキーが主人公のワンショットで、バッキーがフューリーの指令でヤング・アベンジャーズパトリオット、ケイト、ヴィジョンと共闘するというものです。過去のクリスマスの回想シーン、若手との共闘を通して自分がいつの間にか若手を導く立場になっていることにバッキーが気付く流れ、ラストのネイモアとの再会と読ませる内容でした。

同じエドブルベイカーが担当しているということもあり、ウィンター・ソルジャーやデス・オブ・キャプテン・アメリカシリーズと同じハードボイルドなテイストでストーリー的にも繋がっていますので、そちらを読んだことがあれば違和感なく読めると思います。

もちろんこちらもヴィレッジブックスさんから通販限定で邦訳が出ていました。

Civil War: New Avengers

まだまだ続くシビルウォーのタイインを読むシリーズですが、今回はブライアン・マイケル・ベンディスが担当していたニューアベンジャーズシリーズでのタイインです。

こちらはNew Avengers #21-25 (2006)が収録されており、キャプテン・アメリカルーク・ケイジジェシカ、セントリー、アイアンマンがシビルウォーに関わるまでの経緯(アイアンマンのみシビルウォー後のエピソードですが)が1エピソードずつ描かれるというものです。これまでのニューアベンジャーズシリーズでのジェシカの背景や、サン・オブ・Mでのクイックシルバーの行動インヒューマンズの対応など、事前に押さえておかないと話がわかりにくい部分があるかもしれません。

本作は内容もさることながら、1エピソードごとに異なるアーティストが担当しているところも見どころで、オリビエ・コワペル、レイニル・ユー、パスカル・フェリー、ジム・チャンとマーベルのトップアーティストたちが集結しています。

ヴィレッジブックスさんから出ていた邦訳では日本語版独自にNew Avengers Annual #1 (2006)も収録されているようです。

こちらはシビルウォーよりも少し前の話のようで、ルーク・ケイジの結婚のエピソードなのですが、登場するヴィランはもしやニューアベンジャーズ:ブレイクアウトで火だるまになってしまったエレーナでしょうか…。再登場しそうな退場の仕方ではありましたがまさかこんなところで登場してさらに悲惨な結末を迎えていたとは…。本来はルーク・ケイジの絡みで収録されたエピソードだと思うのですが、むしろエレーナの方が気になってしまいました。

インフェルノ

ハウス・オブ・X/パワーズ・オブ・Xから始まったジョナサン・ヒックマンによるクラコア期X-MENシリーズの第一部完結編とのことで、モイラとデスティニーの因縁など、ハウス・オブ・X/パワーズ・オブ・Xの内容がうまく回収されており、このあたりはさすがヒックマンという感じです。特に邦訳の時系列では前作にあたるトライアル・オブ・マグニートーの脚本が微妙だったので余計にヒックマンの力量を感じました。ただ、通してみるとヴォールト潜入や剣闘大会など蛇足だったのでは…という部分も多くあったシリーズだったなというという印象です。ストーリーも複雑で途中からはちょっと入りづらいシリーズになってしまいましたね。

いったんここで一段落ということで、ここまでの邦訳関連作品へのリンクをまとめておきます。

本作以降ヒックマンは降板し、X-MENシリーズはジェリー・ダガンが引き継ぎ、また他の多くのアーティストによって関連シリーズも展開されていくことになります。

マーベル グラフィックノベル・コレクション(55) ファンタスティック・フォー:カミング・オブ・ギャラクタス

アシェットのマーベル グラフィックノベル・コレクション第55号はギャラクタスの初登場エピソードである歴史的作品、ファンタスティック・フォー:カミング・オブ・ギャラクタスでした。

リードとスーの結婚式のアクシデントを描く番外編エピソードから始まり、インヒューマンズの登場からギャラクタスとの戦いへと至るのですが、そもそもページ数も結構多いうえに、クラシック作品ならではのセリフ詰め込みも相まってとんでもないボリュームです。また、クラシック作品あるあるのセリフの読みづらさとマーベル グラフィックノベル・コレクションの翻訳の質もあり(マーベル グラフィックノベル・コレクションでは読みにくいクラシック作品ほど翻訳も厳しいケースが多い気がします…)、通して読むにはかなり時間がかかってしまいました。

ただ、ギャラクタスはもちろんのこと、シルバーサーファーやインヒューマンズのブラックボルトやマキシマスなど現在でもお馴染みのキャラクターたちが大挙して登場しますし、それらのキャラクターの根幹も60年前近いこの初登場時点ですでに完成していたこともわかり、まさに歴史的な作品だと感じました。

なお、本作はヴィレッジブックスさんのマーベル・マイルストーンズという通販限定シリーズで邦訳が出ていたようですが(今回のアシェット版よりもう少し手前のエピソードから収録されていたようです)、残念ながら現在では入手困難となっています。今回マーベル グラフィックノベル・コレクションで発売されたのは有難いところですね。

Civil War: Thunderbolts

引き続きシビルウォーのタイインを読み続けています。こちらはマーベルの悪役チームが所属するサンダーボルツのタイインで、Thunderbolts #101-105までが収録されています。

超人登録法が施行されるヒーローたちが二分される中、ジモ率いるヴィランチームであるサンダーボルツが治安維持のためにアメリカ政府に雇われ、トニー陣営が進めている収容所の開発にも手を貸します。しかしその一方でジモはキャプテン・アメリカ陣営にも接触し、助けを提供しようとします。シビルウォー以前にジモは自分の命を投げ出してキャプテン・アメリカを助けており、心を入れ替えて善人なったことをアピールしているのですが、やはりというか何やらだいぶ裏がありそうな様子で終わります。

シビルウォー本編ではジモがキャプテン・アメリカに渡したキーは実際に使われる機会がなかったような気がするので一体このやり取りは何だったのか…という気がしなくもないですが、サンダーボルツシリーズの続きがとても気になるタイインでした。

もちろんヴィレッジブックスさんからも邦訳が出ていました。ブリスターコミックスさんではまだ新品の入手が可能なようです。

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